失敗しないタイ不動産の底値買い

公開日 2022.08.03
失敗しないタイ不動産の底値買い
もくじ

底打ちしたタイの不動産市場

筆者は、長年外資系投資銀行の国際不動産ファンドで運用の仕事をしていたが、2011年にアーリーリタイアしバンコクに移住して以来、その経験を活かして個人投資家としていくつかのコンドミニアムに投資してきた。

とはいえ、既にリタイアしているので投資元本は5,000万円に限定し、適宜資産の入れ替えをしながら投資を繰り返してきた。失敗して損切りを余儀なくされたものもあったが、2019年に投資物件を全て売却したところ、最終的に3,000万円ほどの利益となった。もっとも、その後はタイの不動産市場が低迷する中、「休むも相場なり」 と様子見を続けているのだが…。

購入国 シェア

従って、2013年頃から外国人投資家に人気が出てきたバンコクの不動産が、やがて2017年に中国人投資家(香港経由含む)の爆買いでピークを迎え、その後はマーケット失速に伴うキャンセル増加と供給過剰によって販売在庫が積み上がり、最後はコロナ禍で新規供給もほとんどストップするという天国と地獄を見てきたわけである。

また、筆者は2018年に当時連載していた経済雑誌や自身のブログの中でも、いよいよタイの不動産市場が失速し始めたので、そろそろ不動産投資は手仕舞いした方がよいと書いたのであるが、その後のコロナ禍もあって不動産市場の低迷は最近まで続くことになったのである。

一方、中国や韓国の不動産市場は今になって崩壊を始めている。そして、日本では日経平均がまだ3万円の回復もできてない中、東京のマンション価格だけはバブル期の水準を超えてきたということから、日本の不動産市場も天井圏が近いのかもしれない。

それに対し、タイは2022年に入ってコロナも一段落し、3年以上続いた不動産不況からやっと脱したようだ。コンドミニアム市場に関しては、今年第1四半期のバンコク首都圏での新規発売は全体で15,200ユニットとなったが、ピーク時でも年間60,000ユニットの新規供給であったことを考えると、これがいかに大きな数字であるかがわかる。

ただし、郊外の200万バーツ(800万円)以下のいわゆる一次取得層向けコンドミニアムの需要が急回復しているのであって、この傾向は今も続いている。すなわち、都心部が本格的に回復するには、外国人投資家がどうしても不可欠なのである。

ちなみに、外国人が投資する価格帯は500万バーツ(1,900万円)以上が多いが、第1四半期のこの価格帯の新規供給は1,580ユニットと全体の1割しかなく、しかも売行きはわずか17%と低迷している。

ところで、タイ政府もこのことはよくわかっていて、外国人の投資を促すために、9月から25万ドル(3,400万円)以上の不動産を購入した50歳以上の外国人リタイアリーに対し、家族同伴で住める10年間の特別ビザを出すと決めたところであり、これが外国人投資家を呼び込む一因になってほしいものだ。

プレビルドで時間稼ぎとリスク軽減

筆者はタイのコンドミニアム市場が底を打ったからといっても、いきなりV字型回復するとは考えてない。世界的な景気後退懸念が広がっているし、ゼロコロナ政策で海外渡航が禁止されている中国人投資家がすぐに戻ってくるとも考えにくい。また、パタヤではウクライナ戦争でロシア人投資家も期待できない。従って、タイのコンドミニアム市場は今の底値状態がしばらく続くU字型回復になると考えている。

ビックデベロッパーランキング

さらに、日本人にとって今の行き過ぎた円安バーツ高はタイミングが非常に悪い。現在、1バーツが3.8円にもなっているが、今後さらにバーツ高になるかもしれない。とはいえ、将来、日銀が利上げを始めるか、世界のインフレが落ちついてくれば金利差も次第に縮小し、やがて円高バーツ安へと転換が始まると考えている。日本の経済力が実際にこれほど弱まったとは思えないからだ。

そうであれば、今の底値買いのチャンスを生かすには、完成物件や中古物件ではなく、これから売り出されるプレビルドへの投資の方が好都合だ。完成物件の先物買いともいえるプレビルド投資の場合、投資家は最初の半年ほどで物件価格の20%から25%をダウンペイメントとしてタイバーツで払うことになるが、残金の75%、80%についてはプロジェクトが竣工するまで支払いが猶予されるからである。

例えば、2年後竣工予定プロジェクトのプリセール(最初の販売)で、CBD(中心部ビジネス街)にある1,000万バーツの2ベッドルームを買うとする。そこから数か月間で25%に相当する250万バーツのダウンペイメントを払うが、残金の750万バーツは竣工引渡しまでの2年間、為替レート選択の猶予期間ができたことになる。

つまり、この期間内に為替が円高バーツ安に転換すれば、ここぞと思う時に、もしくは何度かに分けて残金をタイに送金すればいいのである。

デベロッパーのブランドパワーと財務体質

日本であれば、住宅開発には国交省が睨みを利かし法的整備もできている。従って、不動産大手5社であればもちろん安心だが、もっと小さないわゆるマンデベと呼ばれるマンション開発専業企業のプロジェクトであっても、しっかりした施工をしてくれるのでそれほどブランドにこだわる必要はない。むしろ、消費者は価格やロケーション、間取り、その他スペックを重視して物件選びをするのが普通だ。

しかし、タイには日本のように厳しい建築基準法や品確法がなく、デベロッパーによっては建築コスト削減のための手抜き工事や勝手な仕様変更を平気でするところがある。それを知っているので、タイ人はブランドを重視するのである。

また、筆者が最初の著書を書いた2016年のころは、住宅の新築志向が非常に強かった。しかし、都心や近郊の駅周辺では用地取得がかなり難しくなった今、駅から500メートル以上離れた新築よりも、駅近の中古物件を選ぶ人が増えてきている。

この場合、タイ人が重視するのがその物件のブランドだ。建築のプロでもない一般消費者は、いくら建物をチェックするといっても隠れた瑕疵などわかるはずもなく、結局はブランドに頼ることになる。

さらに、最近はタイでも住宅を購入する目的が変化してきている。昔は一度買えばそこにずっと住むので、将来の転売価値のことなどあまり考えなくてよかった。しかし、今は住宅もニーズに合わせて買い替えていく時代になっている。その場合、やはり人気ブランドの物件ほど流通性が高く、高い値段で売却できるのである。

しかし、われわれ日本人の場合、ロケーションなら自分の足で丹念に見て歩けば大体その良し悪しがわかるが、ことブランド価値となると、そうはいかない。

そこで、次の表を紹介する。これは、最近のビッグ10と呼ばれる大手デベロッパーに対して、タイ人住宅購入希望者1,200人が持つブランドイメージを調査したものである。(注:ビッグ10の定義にはいろいろあるが、この表は不動産調査会社AREAによる過去の住宅供給数に基づく)

ビッグ10デベロッパーのブランド

解説によれば、サンシリが総合力で最も高く評価されているものの、住宅のクオリティではランドアンドハウスが1位ということだ。中にはビッグ10なのに非常に評価の低いデベロッパーもあり、興味深い。もっとも、筆者はサンシリとランドアンドハウスにこれほどのブランドパワーの差はないと思っているのだが…。

また、これは戸建てやタウンハウスをも含めた住宅全体のブランド評価であり、コンドミニアムだけに絞っているわけではないので、あくまでブランド価値を理解する上での一つの参考としてもらいたい。

最後にもう一つ、プレビルドの場合、デベロッパーを選ぶ上で財務内容も重要である。特に、今はコロナ禍で赤字決算が続き、資金的余裕がなくなっているところは少なくない。最近では、中堅デベロッパーでのオールインスパイアーが開発中の全プロジェクトをストップしてしまい話題になっているが、今後工事が再開できるのか予断を許さない。

そして、この中にはJR九州とフージャースが同社と合弁で開発中の大型プロジェクトも含まれるが、日系が入っているからと安心してはいけないということでもある。

このリスクはプロの間ではコンプリーションリスクと呼ばれるが、プレビルド特有のリスクでもあり、今のような時期は、ビッグ10と呼ばれる実績のある大手デベロッパーや、SCアセットのように財務内容のよいデベロッパーのプロジェクトを選ぶべきである。

※当コラムは、著者個人の見解に基づくものであり、東急リバブルの公式発表や見解を表すものではございません。また、提供する情報等は作成時現在のものであり、今後予告なしに変更又は削除されることがございます。

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