「所有者不明土地問題」何が問題?

公開日 2022.11.11
「所有者不明土地問題」何が問題?
もくじ

1.はじめに

最近、「所有者不明土地問題」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
実はこの問題、今後ますます深刻化するおそれがあり、その解決は喫緊の課題とされています。
その解消に向けた法律が、令和5年4月から段階的に施行されます。
今回は、その一部をご紹介させていただきます。

2.所有者不明土地とは

現状を正確に反映した不動産登記がなされていないことにより、以下のいずれかの状態となっている土地を「所有者不明土地」といいます。

  • 不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
  • 所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地

そして全国のうち所有者不明土地が占める割合は、九州本島の大きさに匹敵するともいわれています。

3.どんな問題が生じているのか

土地の所有者の探索に多大な時間と費用が必要となり、
もしくは所有者と連絡が付かないことなどにより、

  • 公共事業や民間取引など土地の利活用の阻害要因となる
  • 災害からの復旧、復興事業が円滑に進まない
  • 土地が管理されず放置され、環境の悪化や自然災害時に隣接する土地への悪影響が発生したりする

など、 様々な問題が生じています。

4.どのように解決するのか

その解決方法のひとつとして不動産登記制度の見直しがなされます。
具体的には、これまで任意とされていた相続登記および住所等の変更登記申請を義務化することで、所有者不明土地の発生を予防しようとしています。
過去に相続した不動産についても、遡って相続登記の義務化の対象になりますので注意が必要です。(※猶予期間があります。)

【1】相続登記の申請の義務化(令和6年4月1日施行)

基本的なルール
相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
遺産分割が成立した時の追加的なルール
遺産分割の話し合いがまとまった場合には、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請しなければなりません。
※施行日前に相続が発生していたケース(経過措置について)
基本的なルール
施行日前に相続が発生していたケースについても、登記の申請義務は課されます。
ただし申請義務の履行期間については、施行前からスタートしないように配慮されております。
具体的には、施行日とそれぞれの要件を充足した日のいずれか遅い日から法定の期間(3年間)がスタートします。
相続登記申請義務の履行期間

【2】住所等の変更登記の申請の義務化(令和8年4月までに施行)

登記簿上の所有者については、その住所等を変更した日から2年以内に住所等の変更登記の申請をしなければなりません。
義務化が開始された時点で既に住所が変更されていた場合には、住所変更があった日または改正法の施行日のいずれか遅い日から2年以内に住所変更登記申請しなければなりません。

全国における所有者不明土地の割合(R2国土交通省調査)
出典

法務省民事局 令和3年民法 •不動產登記法改正、

相統土地国庫帰属法のポイント 令和4年10月版

都市部では自然人・法人を問わず、転居・本店移転等のたびに登記することに負担を感じ、放置されがちであることが所有者不明土地の主な原因との調査結果もあります。

5.どんな状況に注意が必要か

相続登記を申請しようとする場合、全ての相続人を把握するための資料(戸籍謄本など)の収集が必要となります。
しかしながら以下のような状況では、それが容易ではありません。

  • 代替わりが続いて、もはや誰に所有権があるのかわからない
  • 相続人間の話し合いがまとまらず長年放置されている
  • 相続人間の話し合いは済んだが遺産分割協議書を作成していない
    そうこうしている間に更に相続が発生してしまった
  • 遺産分割協議書の原本を紛失してしまった

などの場合は注意が必要です。

6.まとめ

今回は所有者不明土地問題と不動産登記制度の見直しについてご紹介しました。
相続登記と住所等の変更登記の申請の義務化については、正当な理由がないのにその義務に違反した場合、それぞれ10万円以下、5万円以下の過料の適用対象となります。
一度ご所有の不動産について点検をなされてはいかがでしょうか。
特に長期間、相続登記をしないままの不動産をご所有の場合は、早めのご対応をお勧めいたします。

出典
法務省 所有者不明土地の解消に関するパンフレット ほか

(令和4年10月17日現在)

※当コラムの内容は、公開日当時の法令等に基づいております。

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